最先端の金属アディティブマニュファクチャリング(AM)技術の開発およびソリューション・サービス提供拠点として、「Nikon AM Technology Center Japan」を2025年、埼玉県行田市に開設しました。業界最先端の大型L-PBF方式(NXG XII 600)と、ニコンの高精度DED方式の装置(LM300A)を備え、金属AM技術開発およびアジアのお客様に向けて試作などの金属AM加工に関するソリューション・サービスを幅広く提供します。
宇宙輸送のコストは、過去数十年で大幅に低下してきました。NASAの資料では、アポロ時代のような使い捨て型の宇宙輸送システムについて、飛行ハードウェアのコストを約5万ドル/kgとする概算が示されています。一方、近年のロケットでは数千ドル/kg程度の水準が見られ、再利用化がさらに進むことで、将来的には100ドル/kg程度まで低下する可能性も予測されています。
このコスト低減において、大きな役割を担うのが、金属3Dプリンターで材料を積層して立体を造形する「AM技術」です。AM技術は、アディティブマニュファクチャリングとも呼ばれます。
AM技術は、部品の一体構造化や軽量化、工程の簡素化、ロケットエンジンの再利用を可能にし、ロケット本体の製造・運用コストと軌道投入コストの双方の低減に貢献します。
AM技術では、従来は複数の部品で構成されていたロケットエンジンを、モノリシックな一体構造部品として製造できます。これにより、部品点数を大幅に減らし、溶接やろう付けに必要な時間を短縮するとともに、工程の複雑さを軽減できます。
部品点数や接合箇所を減らすことで、製造工程を簡素化するとともに、接合部に起因する故障リスクの低減も期待できます。さらに、AM技術の高い設計自由度を生かすことで、大幅な軽量化と完全な再利用が可能になります。
ロケットを再利用できれば、ロケットエンジンのコストを複数のミッションで償却できます。これにより、ロケット自体の製造・運用コストだけでなく、軌道投入コストの低減にも貢献します。
Karman Space Programmeは、英国のImperial College Londonに在籍する工学系の学生4人によって設立された、学生主導の宇宙開発・ロケットプロジェクトです。学生が中心となってロケットと推進システムの開発に取り組み、実際の打ち上げを見据えた設計・製造・試験を進めています。
Karman Space ProgrammeとNikon SLM Solutionsが共同で製造した液体ロケットエンジンは、壁面内部が中空になっています。この中空部分に推進剤を流すことで、エンジンを冷却する構造です。
推進剤はノズルを通ってエンジン下部まで運ばれます。その後、壁面内部を通ってエンジンを冷却しながら上部へ戻り、液体酸素と混合されます。
エンジン内部は数千ケルビンに達する超高温環境となる一方、上部では極低温の推進剤である液体酸素を扱います。AM技術によって、このような複雑な冷却構造を一つの部品として製造できます。
従来の製造方法では、複数の部品を製造したうえで、溶接やろう付けによって接合する必要があります。これには時間とコストがかかるうえ、製造工程も複雑になります。
AM技術では、冷却機能を備えた複雑なエンジン構造を一体造形できます。これにより、接合工程を減らし、製造に要する時間を短縮するとともに、工程の複雑さを大幅に軽減できます。
Karman Space Programmeでは、Nikon SLM Solutionsとの提携後、従来よりも短い納期でエンジンを製造できるようになりました。
Nikon SLM Solutionsは、IN718をさまざまな用途で扱ってきた経験を生かし、造形パラメータを正確に調整しています。部品は、Nikon SLM Solutionsのドイツ・リューベック本社で造形されました。
燃焼試験では、エンジンを固定した状態で推進剤に点火し、最大推力まで引き上げます。これにより、実際のロケット打ち上げ時に材料や部品が直面する環境と同等の負荷を再現できます。
固定したエンジンには、圧力タップや温度センサーを接続できます。これにより、燃焼時の圧力や温度など、多くのデータを取得できます。
今回の試験前には、燃焼室全体の圧力損失が非常に低いことを確認しました。また、燃焼室が完全に密閉され、すべてのフランジと接続部が正常に機能していることも実証しました。
Karman Space ProgrammeとNikon SLM Solutionsは、共同で製造した液体ロケットエンジンの燃焼試験を実施しました。その結果、Karman Space Programmeは、液体ロケットエンジンにおける英国の学生チームの推力記録を更新しました。
エンジンは、7.2キロニュートン以上の推力を達成しました。壁面付近の温度は1000度を超えましたが、壁の厚さは0.5mmに抑えられています。
燃焼試験では、6秒間のロングバーンも実施しました。さらに、エンジンが18秒以上稼働できることを実証しました。
試験後には、修理や部品交換を一切行うことなく、エンジンを再利用できることを確認しました。これは、一体構造化されたエンジンが高温・高負荷の環境下で稼働し、そのまま再利用できることを示す結果です。
今後10年間で約2万機の衛星が必要になると予測されており、それに伴い、数多くのロケット打ち上げが必要になります。今回のエンジンと同等の推力チャンバーに加え、より大型の推力チャンバーに対する需要も見込まれています。
Nikon SLM Solutionsの「NXG 600 E」は、X軸とY軸で最大600mm、Z軸で最大1.5mの造形が可能です。また、NXGプラットフォームを超える取り組みとして、直径1mを超える試作品も存在しています。
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AM技術による一体構造化は、部品点数と接合工程を減らし、ロケットエンジンの製造時間を短縮するとともに、工程の複雑さを軽減します。設計自由度を生かした軽量化は、ロケットの性能向上にもつながり、結果として宇宙輸送コストの低減に貢献します。
さらに、修理や部品交換を必要としない完全な再利用性により、エンジンコストを複数のミッションで償却できます。AM技術は、ロケット本体の製造・運用と宇宙輸送の両面からコスト低減を支える製造技術です。
Karman Space ProgrammeとNikon SLM Solutionsが製造したエンジンは、7.2キロニュートン以上の推力と18秒以上の稼働を実証しました。
次のステップは、このエンジンを「Vega」ロケットに搭載し、米国で高度25kmまで打ち上げることです。その後は、さらに大型のロケットに向けたエンジンの製造を目指します。
技術の開発およびソリューション・サービス提供拠点
最先端の金属アディティブマニュファクチャリング(AM)技術の開発およびソリューション・サービス提供拠点として、「Nikon AM Technology Center Japan」を2025年、埼玉県行田市に開設しました。業界最先端の大型L-PBF方式(NXG XII 600)と、ニコンの高精度DED方式の装置(LM300A)を備え、金属AM技術開発およびアジアのお客様に向けて試作などの金属AM加工に関するソリューション・サービスを幅広く提供します。
株式会社ニコン
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