トップメッセージ

代表取締役 兼 社長執行役員 馬立稔和

サステナブルな未来へ向けた挑戦

ニコンのサステナビリティ

2021年12月、ニコンは取締役会において「サステナビリティ方針」を決定しました。環境や人権をはじめとした社会課題への取り組みは、事業リスクを減少させるとともに、収益機会につながると認識しています。サステナビリティを適切に推進することは、中長期的に企業価値を向上させ、ステークホルダーの皆様からの期待に応えることでもあります。そうした考えのもと、当社のサステナビリティに関する取り組みを一層強化するための考えを明文化したものが本方針です。企業理念である「信頼と創造」に基づき、事業が環境・社会に与える影響を常に評価・改善し続けることで社会の期待に「信頼」で応えるとともに、今後はより積極的に事業を通して環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献する価値を「創造」していくというニコングループの意志を示しています。
ニコンでは、この方針に沿い、2022年4月に発表した中期経営計画において、2030年のありたい姿として「人と機械が共創する社会の中心企業」を掲げました。

ありたい姿に込めた想い

私は社長就任以来、「社会におけるニコンの役割」を自らに問い続けてきました。ニコンは100年を超える歴史において、光利用技術や精密技術の向上に努め、顕微鏡やカメラを製造し、さまざまな分野における研究や写真文化の普及など、「“人”が“機械”を用いて新しい世界を開拓する」ことに貢献してきました。また、半導体やFPDの製造に不可欠な露光装置を提供し、デジタル社会を進展させ、「“人”に新たな体験を提供し、その可能性を広げること」を支えてきました。
当社の歴史は“人”と“機械”が寄り添うことを通じて、人をより豊かに、幸せにすることをめざしてきたものであり、それは今後も私たちが変わらずに担うべき役割であると捉えています。
社会は今、インダストリー5.0という新しいステージへの転換期を迎えています。それはまさに「人と機械が共創する社会」と言えるでしょう。我々がこれまで培った技術や知見を活かすことで、人や社会をさらに豊かにする可能性が広がります。
精密な制御・センシング技術、AI、ビッグデータなどを組み合わせたり、M&Aや他社との協業をしたり、さまざまな方途によって高度に自動化された機械、そのコンポーネント、サービスなどを提供することで、そうした転換期に重要な役割を果たしたい。「ありたい姿」にはそのような想いと決意を込めています。

社会に貢献する価値の「創造」

“人”が豊かで幸せであるためには、心身ともに健康であることはもとより、社会や地球環境も健全な状態、つまり持続可能であることが不可欠です。人と機械が共創する社会において、ニコングループは、「インダストリー」と「クオリティオブライフ(QOL)」の2つの価値提供領域の事業を積極的に展開していきます。それにより、特に「脱炭素」「資源循環」「安全・労働環境」「健康」「心の豊かさ」に貢献し、持続可能な社会の実現をめざします。
「脱炭素」については、ニコングループは2051年3月期のカーボンニュートラル達成を目標にしていますが、事業を通じて社会の温室効果ガス削減にも貢献していきます。具体的には、リブレット加工と呼ばれる鮫肌を模した微細な加工をタービンや飛行機、風車の羽根などに施すことで、エネルギー効率向上や燃費改善、CO2削減に貢献する事業を推進していきます。既存事業においても、製品の省エネルギー化や、ものづくりを効率化させるロボット、デバイスの製造拡大などを進めます。
また、「資源循環」については、製造工程における省資源、廃棄物削減に貢献する露光装置のフォトマスクのデジタル化や中古品の再生販売事業の拡大に取り組みます。
そして、「安全・労働環境」については、自動化、省人化を実現するセンシング・イメージング・ディスプレイなどの製品・技術を、「健康」については、患者や医療従事者の方々の負担を軽減する創薬や再生医療を支える製品・技術を、「心の豊かさ」については、クリエイティブな映像表現の実現や人のつながりに寄与する映像制作技術などを提供していきます。
ニコングループは、持続可能な社会に貢献する事業を積極的に生み出し、育てていきます。

従業員が挑戦できる会社へ

これから取り組む事業戦略には、新たなチャレンジが多く盛り込まれており、それらの達成には、従業員がプロアクティブに行動し、より一層活躍することが重要です。そのため、従業員の教育に力を入れていきます。また、人と機械との共創を社内にも積極的に取り込み、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めます。そして、従業員が高度でクリエイティブな課題に挑戦できる環境を提供していきます。
さらに、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組みます。会社とは、従業員だけでなく協業パートナーなど、さまざまな人が集まり、シナジーを生み出す価値創造の場であると考えています。2021年11月に建設計画を発表した新本社もそうした場のひとつです。多様な人が集まり、フレキシブルに働くことができるよう、従業員の意見などを積極的に反映していきます。また、多様な従業員が意欲を持って働ける仕組みや制度も充実させていきます。
従業員がさまざまな挑戦ができるようにすることで会社に活力を与え、お客様や社会により高い価値を提供し、その達成を糧に新たな挑戦を行う。そのような好循環を生んでいきたいと考えています。

サステナブルな未来へ

この1年を振り返ると、世界が合意したSDGsの目標のひとつである「平和と公正をすべての人に」の達成を揺るがす事態がウクライナで起きたことは大変衝撃的で、人と社会が豊かさを享受する基盤である平和の大切さを改めて痛感しました。一刻も早い解決と平和の回復を願うとともに、すべての主体が社会課題全体の解決に向けて協働する必要があるという思いを強くしています。
新型コロナウイルス感染症もいまだ収束せず、困難な社会課題は絶えることがありません。そうした中で、我々の力をより広く活用し、持続可能な未来に貢献できるよう、パートナーシップを大切にしつつマテリアリティ(重点課題)の解決・改善に取り組んでいきます。
ステークホルダーの皆様には、これからのニコングループにご期待いただくとともに、一層のご支援をお願い申し上げます。

2022年7月
代表取締役 兼 社長執行役員
馬立稔和