トップメッセージ

責任と覚悟を胸に

2026年4月に代表取締役 兼 社長執行役員 CEOに就任した大村泰弘です。日頃より当社を支えてくださるすべてのステークホルダーの皆様に感謝申し上げます。
さて、前中期経営計画(2022〜2025年度)では、新たな事業を育てるべく多くの挑戦を行い、一定の成果を得た一方、市場環境の急激な変化や経営資源の分散によって、全社としての収益性が大きく損なわれました。この結果について、経営を預かる者として重く受け止めています。一方で、さまざまな挑戦により、我々の「強み」や「企業価値向上のための方向性」は、より明確になってきました。今年4月に策定した中期経営計画(2026〜2030年度)では、これまでの挑戦の中から、ニコンの企業価値向上につながるものを厳選し、その注力分野に財務規律を重視しながら資源投入していく方針です。
現在のビジネス環境を俯瞰しますと、世界は地政学的な緊張や経済・社会の急速な変化に直面し、紛争に伴うエネルギー供給やサプライチェーンの断絶、政策や規制の不確実性が高まる一方でAIを中心とした技術革新が急速に進み、新たな投資が世界経済を下支えし、成長の芽も確実に広がっています。
人間とテクノロジーが共創する社会の中で、光利用技術と精密技術で社会に貢献する私たちの使命はますます重要性を増していると認識しています。私は技術者として現場で学び、仲間とともに困難を乗り越えてきました。その経験を胸に、誠実さと挑戦心をもって、従業員やステークホルダーの皆様とともに前進していく決意です。

光の力で新しい価値を

当社のMission「Unlock the future with the power of light」には、光で未来を切り拓くという意志が込められています。ニコンは100年以上にわたり、光を核とした技術を磨き続けてきました。露光装置に代表される超精密なものづくり、そして、デジタルカメラをはじめとする「映像文化の発展」に寄与する製品をグローバルに展開してきた歴史があります。それらの積み重ねによってブランドを確立し、強固なステークホルダーの基盤に支えられてきました。
そして、当社のVisionは「人と機械が共創する社会の中心企業」であり、それをニコンのあるべき姿として描いています。ではどのようにして、「ニコンは社会の中心」と言われる企業をめざすのか、そのキーワードは、「“光”でフィジカルとサイバー空間をつなぐ」という概念です。現実(フィジカル)空間のモノやコトを光で捉えてデータ化し、仮想(サイバー)空間に送り込む。そこで蓄積・分析されたデータから新たな価値を生み出し、再び光技術も活用しながらフィジカル空間へとフィードバックする。「人と機械の共創」はまさに「フィジカルとサイバーの共創」に他なりません。そして、その循環の主役となり、中心的な役割を担うのが、ニコンの強みである「光」であり「光技術」なのです。
このVisionを実現し、サステナビリティ重視の経営を推進していくため、今回策定した中期経営計画では、「価値創造」と「信頼向上」の重点テーマを選定しました。「価値創造のための重点テーマ」として「事業を通じた社会価値創造」を掲げ、その貢献領域としては、「心の豊かさ」「医療高度化と健康」「デジタル社会の未来」「ものづくりソリューション」の4つを定めています。例えば「医療高度化と健康」の領域では、顕微鏡で撮像した画像やDNA情報をはじめとした膨大なデータをAI等で分析し、これまで未知だった病気の真因に迫ります。このように各事業領域において、データがフィジカルとサイバー空間を循環する「サイバーフィジカルフュージョン」を実現し、実世界を動かす仕組みを提供していきます。
こうした独自の価値創造を原動力として、4つの領域における持続可能な社会への貢献と、自社の持続的成長の双方をめざしていきます。同時に、これらを実現し支えるものとして、「多様な人材と組織力の強化」や、「共創型バリューチェーンの深化」を重点テーマとして注力していきます。

信頼による強固な関係を

「信頼向上のための重点テーマ」については、価値創造と持続的成長を支える経営基盤のひとつと位置付けています。人・社会・地球環境の課題に責任を持って向き合い、対応していくために、8つの重点テーマ(気候変動への対応、資源循環の推進、汚染防止と生態系への配慮、バリューチェーンにおける人権尊重、サプライチェーンのレジリエンス、製品・サービスの品質と安全、情報セキュリティ・サイバーセキュリティ、コンプライアンスの徹底)を特定しています。また、それぞれにありたい姿と戦略、指標・目標を定めており、役員報酬とも連動させ、グループ全体で着実に取り組みを進めていきます。
「気候変動への対応」では、再生可能エネルギー率を2030年度までに100%にすることを目標に、2025年度は、中国にある生産系グループ会社の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えたほか、設備の省エネルギー化やPPAの検討などを進めました。また、「バリューチェーンにおける人権尊重」では、2025年4月に改定した「ニコン人権方針」に基づき救済窓口を整備するとともに、自社グループおよび重要な一部の調達先、請負業務委託先などに対して人権リスク調査・改善を進めました。2026年4月には「ニコングループAI倫理ポリシー」を制定しました。さらに、「サプライチェーンのレジリエンス」では、地政学リスク対応を視野に、バリューチェーンの可視化やBCP体制の強化などを進めています。グループ・ガバナンス、リスクマネジメントのもと、情報セキュリティ・サイバーセキュリティ強化も図っています。
これら一つひとつは独立した施策ではなく、事業の実行力を高めるための基盤です。引き続き、信頼に応える取り組みを着実に進めていきます。

全員が挑み続ける会社へ

私がめざすのは、「社員全員が挑み続ける会社」です。現場主導のスピードある実行力と、失敗を学びに変える文化を大切にします。また、一つの答えに固執せず、多様な視点を取り入れ自分の力に変えていくこと、お客様やお取引先ともシームレスに仕様段階からともに作り上げる関係を築くことが、価値創造への挑戦を加速・拡大させる力となります。
私は、社長就任以来、社員全員に「難しい課題に挑むときこそ、笑顔を忘れないでほしい」と伝えています。笑顔は人の気持ちを前向きにさせ、周囲を巻き込み、挑戦を持続させる力になります。経営者として、現在のニコンは難しい局面にありますが、自分たちを「ありたい姿」に近づけるための好機と捉え、私自身が率先して、笑顔で挑み続けます。
ステークホルダーの皆様と、積極的な対話を通じて、光の力でより良い未来をともに創っていきたいと考えていますので、引き続き皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

2026年7月
代表取締役 兼 社長執行役員 CEO
大村泰弘