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ユーザーからの信頼、
期待に応え続ける。

三輪 治季

  • インダストリアルデザイン
三輪 治季

プロフィール

  • プロダクトデザイナー

    2020年、新卒でニコンに入社。製品の外観デザインを担当。双眼鏡「STABILIZED シリーズ」は「レッドドット・デザイン賞」最高賞を受賞。

コンポーネント番号: 21

01

仕事内容

仕事内容

コンポーネント番号: 22

BtoCからBtoBまで、
ひとりのデザイナーが
幅広く見渡せる。

コンポーネント番号: 3

カメラ、レンズ、双眼鏡などの個人向けのBtoC製品から半導体露光装置などの企業向けのBtoB製品まで、ひとりのデザイナーがここまで多種多様な製品に携われるとは、入社する前は想像もしていませんでした。たとえば、半導体露光装置の外観と、カメラの外観。デザインの基本となる考え方は共通ですが、使われ方も、ユーザーもまるで違う。いつ、どこで、どのように使われるのか、デザインを始める時は常にユーザーのワークフローの洗い出しから始まります。毎回、一から勉強する大変さはありますが、まっさらな気持ちでデザインに取り組めるから、「もっと知りたい!学びたい!」という好奇心がどんどん湧いてくるのです。

コンポーネント番号: 3

私たちは、設計者と協力してデザインを検討していきます。
私たちがデザインできるのは、あくまでも外側のところ。その製品に求められる性能や品質、成し遂げたいことに対して、適切な骨格であることは大前提です。その上で、ユーザーが本当に使いやすいかどうかを評価していきます。設計者とデザイナー、それぞれの役割は違うけれど、目指すところは同じです。大枠の構造を変えることは難しくても、ほんのすこし中身を調整することで、もっと良い形状に変えられるかもしれない。その可能性を探るべく、何回も打ち合わせを重ねていきます。設計者も、「デザインのことはデザイナーに聞こう」と私たちを信頼してくれていて、いいチームワークができていると思います。

コンポーネント番号: 4

コンポーネント番号: 21

02

大切にしていること

大切にしていること

コンポーネント番号: 22

しっかりとした客観視と、
バランスが大事。

コンポーネント番号: 3

自分が過ごす空間を、自分の好みのもので埋めつくしたい。プロダクトのデザイナーになろうと思ったのは、自分の“好き”が原点でした。けれども、今仕事をしていて感じるのは、自分の“好き”以上に、無数にいるユーザーの気持ち、感じ方が大事だということ。小柄な人もいれば、大柄な人もいる。背の高さも手の大きさも、目線の位置も千差万別です。様々なユーザーが、触ったときにどう感じるか、ユーザーにシンクロするような気持ちで、検証をしていきます。
デザインしていて楽しいと感じる瞬間はたくさんありますが、私が特に好きなのは、最高の比率を見つけた瞬間です。たとえばレンズであれば、製品の中でどんなリズムをつくるか。レンズの構成のままの外観が、触りやすいとは限りません。手がスムーズに行き来する形で、なおかつ、レンズ単体で置いていても、本体に装着していても様になる形状。ゼロカンマ何ミリの比率を変えただけで、パッとよくなる瞬間があって、その比率を見つけた時はとても嬉しくなります。
もちろん自分ひとりで見極めるのは難しいため、いろいろな人に実際にプロトタイプを触ってもらい、意見を交換するようにしています。

コンポーネント番号: 3

デザイナーとして、「こうしたい」というこだわりも、もちろん大切ですが、こだわりをすべて盛り込んだ結果、値段が高くなってしまったら、お客様のためになりません。こだわりは持ちながらも、デザイナーの独りよがりにはならないように意識しています。一方で、ユーザーとしては必要なものなのに、コストの制約から採用できないとなった場合は、粘り強く交渉するようにしています。ユーザーにとってのベネフィットとデザイナーとしてのこだわり、そのどちらもバランスよく満たしているものが、良いプロダクトデザインなのだと思います。

コンポーネント番号: 4

コンポーネント番号: 21

03

印象に残っている仕事

印象に残っている仕事

コンポーネント番号: 22

自信を持って世に出せるまで、
何度でも検証する。

コンポーネント番号: 3

これまで様々な製品を担当してきましたが、外観のスタイリングで特に苦心したのは、手ブレ補正機能付の双眼鏡「STABILIZED」です。製品の特性上、最も見込めるのは、コンサート需要。ブレずに“推し”が見える。小さめのバックに入れても、かさばらない。高い防振性能とコンパクトな形状は、基本骨格の段階ですでに高いユーザビリティを実現できていました。あとはスタイリングで性能の高さや品質の良さをどう伝えるか、正確な数を記憶していないほど、たくさんパターンを出して検証していきました。また、特に印象に残っているのは接眼部分のキャップのデザインです。レンズにスポッとはまって張力で止まるタイプのキャップ。止まるところの径さえ一致すれば、デザインの自由度は比較的高いパーツでした。これまで採用されていたキャップは、左右の接眼部分を波型の形状でつないでいたのですが、ややラフな印象があったため、より洗練された印象をつくろうと考えたのです。このキャップの形状だけで20パターン以上検証し、「キャップで、そこまでつくる?」と上司に言われた覚えがありますね。

コンポーネント番号: 4

コンポーネント番号: 3

キャップにわざわざ着目するユーザーは、ほとんどいないでしょう。以前の機種からキャップの形が変化していることに気づくユーザーもいないはずです。けれども、本体はもちろんキャップにまでこだわって検証したことで、デザイナーとして自信を持って世に出せるものができたと思っています。「STABILIZED」は、優れたプロダクトに贈られる世界最大級のデザイン賞、レッドドット・デザイン賞でBest of the Bestの評価もいただきました。市場調査で家電量販店などを回る時、売り場で「STABILIZED」を見つけると、「あ、いた!」と嬉しくなります。

コンポーネント番号: 21

04

これからのこと

これからのこと

コンポーネント番号: 22

信頼と期待に
応え続けるために。

コンポーネント番号: 4

コンポーネント番号: 3

企業内のデザイン部門に所属するデザイナーとして目指すべきは、会社全体のありたい姿に寄り添うことだと思っています。ニコンがどの方向を向いて、どんな価値を届けたいか。その意思を、まっすぐ形にして伝えられるのが製品。だからこそ、ニコンのありたい姿を体現するような製品を、これからもつくり続けたいと思っています。

コンポーネント番号: 3

デザインをする上で励みになるのは、ニコンの製品を愛してくれているユーザーの存在です。企業ミュージアムであるニコンミュージアムに行くと、過去の製品の前でずっと立ち止まっていたり、製品本体の写真を撮影したりしている人を見かけることがあります。その姿を見る度に、ユーザーのニコン製品への愛を感じると同時に、今後世に出ていく製品で、この人たちの期待を裏切ってはいけないという気持ちを強くしています。私たちが最も大切にしないといけないのは、ニコンに寄せていただくユーザーからの信頼、期待に応え続けること。この製品に触れた時、ユーザーはどう感じるか。無数の顔を思い浮かべながら、今日も一つひとつのデザインに向き合っています。

コンポーネント番号: 13

※所属・仕事内容は取材当時のものです。

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