CFOメッセージ

2022年8月

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業績のV字回復

2022年3月期の業績は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり社歴105年で最大の赤字を計上した前年度から大きく改善しました。映像事業を中心とした構造改革を完了し、より強靭な企業体質にするとともに各事業における戦略を明確化させた結果、売上収益は5,396億円と9年ぶりに増加に転じ、営業利益は前年度の営業損失▲562億円から499億円とV字回復を果たすことができました。
事業セグメント別で見ても、世界的な部品不足や物流逼迫など厳しい事業環境の中、全セグメントで増収・増益を果たすことができました。
映像事業は販売台数こそ減少したものの、「Z 9」「Z fc」をはじめとする高付加価値のミラーレスカメラ・レンズを中心に平均販売単価が上昇し、売上・利益とも増加、精機事業はFPD露光装置の販売台数が前年の29台から46台へ大きく伸び、半導体露光装置を含むサービスビジネスも堅調で増収・増益となりました。
コンポーネント事業はEUV関連コンポーネントやロボット向けエンコーダ等の販売が伸び、ヘルスケア事業は同事業を構成する「生物顕微鏡」「網膜画像診断機器」「細胞受託生産」の3領域がそろって好調で過去最高の売上となり、産業機器事業も売上が回復し、全セグメントで大幅増益を達成し黒字となりました。

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  • 注:2015年3月期までは日本基準。2016年3月期より国際会計基準(IFRS)で記載。

2023年3月期の見通し

2023年3月期、売上収益はすべてのセグメントで増収の計画で、全社で6,200億円を見込みます。また、営業利益は500億円と精機事業以外の4つのセグメントで増益を計画しています。当期利益の予想は380億円です。
2026年3月期に「売上収益7,000億円、営業利益700億円以上(営業利益率10%以上)、ROE8%以上」を目指す新しい中期経営計画の初年度として、着実に業績を改善させ、今後の持続的な成長につなげたいと考えています。

資本配分と資本市場からの評価

当社は2022年4月7日に新たな中期経営計画を発表すると同時に、300億円・発行済み株式数(自己株式を除く)の9.8%を上限とする自己株式取得を発表しました。投資家の皆さまに対し、将来の成長戦略をお示しすると同時に、過去2年間の政策保有株式を含む有価証券の売却によって獲得したキャッシュ592億円を活用した株主還元の拡充を行う方針を明らかにしたものです。
中期経営計画の資本政策ですが、健全性確保のため自己資本比率は55~60%を維持する方針であり、配分可能原資は今後4年間で累計7,000億円あまりと見込んでいます。
当社は研究開発型の企業として、世の中にないものを生み出し社会をより良くしていくことが使命であり、2030年のありたい姿として掲げる「人と機械が共創する社会の中心企業」を目指すためには、戦略投資・R&D・設備投資が重要だと考えています。このため、中期経営計画ではこれらに配分可能原資の90%程度を振り向ける方針です。
具体的には、R&Dではソリューション強化や材料加工・デジタル露光などの成長ドライバーに、設備投資ではEUV関連コンポーネントの増産、細胞受託生産、ものづくり基盤強化、DXの推進などに資金を回します。

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こうした資本配分方針に裏打ちされた中期経営計画をご説明するため、2022年5月26日に当社初のIR Dayを実施し、各事業部長から中計における事業戦略をご説明するなど、投資家との対話に努めています。
こうした姿勢は資本市場からも一定の評価を頂戴し、業績の改善と相まって株価・時価総額は回復基調にあり、投資家・アナリストの投資スタンスも好転しています。

サステナビリティ方針、TCFD、グローバル・タックス・ポリシー

ニコンは、東証プライム上場企業としてコーポレートガバナンス・コードをすべてコンプライするとともに、さまざまなステークホルダーからのご要望に真摯に耳を傾け、行動しています。
2021年度から今年度にかけて、取締役会において、「サステナビリティ方針」や「グローバル・タックス・ポリシー」を決議し、有価証券報告書にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠した「気候変動に関するリスクと機会」を開示しました。
さらに、中期経営計画策定においては、各事業の本業とサステナビリティ戦略を一体のものとして同時に議論し、具体的な計画に落とし込みました。
具体的には、フォトマスクが不要となるデジタル露光機を新たに開発することで資源の削減に寄与する、顕微鏡を活用した高精度な細胞の品質評価で創薬を支援する、あるいは、光加工機を用いた表面微細加工を風力発電の羽根や航空機の表面に施すことでエネルギー効率を高め脱炭素社会の実現に貢献するといった取り組みを本業の中で行っていきます。
ニコンは、事業、環境、社会・労働、ガバナンスの各分野でマテリアリティ(重点課題)への取り組みを強化するとともに、光利用技術と精密技術というコア・テクノロジーでサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。こうしたサステナビリティへの取り組みは、社会的価値・非財務価値の拡大をもたらし、それは一定の時間軸のなかで、ROEや株価・時価総額などの財務的価値の向上につながるものと考えています。
今後とも投資家をはじめとするさまざまなステークホルダーから幅広いご支持を得られるように努力し、そうしたご支援をベースに持続的な成長を目指してまいります。