社長メッセージ

2022年8月

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ありたい姿・中期経営計画を発表

ニコンは「信頼と創造」という企業理念のもと、社会や文化の発展に貢献し続けています。今般、2022年度から2025年度までの4年間を対象とした中期経営計画を発表しました。
今回の中期経営計画策定にあたっては、まず2030年のありたい姿をイメージし、その実現に向けて2025年に到達するべき目標を定め、その実現に向けた施策を積み上げています。2030年の社会は、人々の価値観や人生観が変化し、気候変動や資源不足など社会環境が変わり、Industry5.0到来などテクノロジーの革新も続きます。このようなメガシフトが起こるなか、人間が生活のための“労働”を機械に任せ、より創造的な「自己実現のための仕事」と「価値を追求する消費」に注力できるようになるための「人と機械の共創」が進むものと考えています。
ニコンには、ものづくりを革新するテクノロジーや高度なソリューションをグローバルに広げる力・ブランド、そしてステークホルダーからの支持といった3つの強みがあります。これらを活かし、2030年の「人と機械が共創する社会」に新たな価値を提供し続けたいと考え、2030年のありたい姿を「人と機械が共創する社会の中心企業」としました。これに向けて、まずはお客様としっかり伴走し、お客様の欲しいモノやコトの「本質」を理解した上で、お客様のイノベーションを支える存在を目指します。
なお、広くステークホルダーの皆さまに興味をもっていただくきっかけづくりとして、「2030年のありたい姿コンセプトブック」をニコンのウェブサイトに載せています。ぜひ、そちらもご覧ください。

前中期経営計画の総括と2つの課題

2019年度から2021年度までの前中期経営計画の総括としては、映像事業の構造改革完遂による体質強化・黒字化、精機事業の顧客・サービスビジネス拡大、ヘルスケア事業の初の通期黒字計上、コンポーネント事業の早期スケール化といった成果に加え、バランスシートの最適化による、より筋肉質な企業体質への改善などが挙げられます。
前期のROEは7.5%と、目標の8%に届きませんでしたが、新型コロナウイルス感染症という予期せぬ事態のなか、着実に前進を果たした3年間であったと考えています。一方、継続課題は「完成品販売中心のビジネスからの進化」および「映像・精機事業に並ぶ収益の柱の育成」の2点です。
課題の1つ目、「完成品販売中心のビジネスからの進化」については、プロダクトアウト的発想から脱却し、お客様に寄り添い、そのニーズを的確に把握し、完成品・サービス・コンポーネントを一体でソリューションとして提供していくことで実現を目指します。
課題の2つ目、「新たな収益の柱の育成」については「5つ全ての事業領域で成長にチャレンジ」します。具体的には、光学・EUV関連コンポーネント、材料加工・ロボットビジョン、デジタル露光、映像コンテンツ、細胞受託生産・創薬支援の5つの「成長ドライバー」に注力します。

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事業領域と成長ドライバー

ソリューション提供の強化により、事業の安定化と収益拡大を目指す

今回の中期経営計画において、2025年のありたい姿は「お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現」としました。その実現に向けて、ソリューション提供の強化により、事業の安定化と収益拡大を目指します。

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中期経営計画の全体像

主要事業:安定化へ向け、顧客接点と提供価値を拡大

映像事業

映像事業のありたい姿は、「映像表現の可能性を広げ、世代を超えた世界中のファンから圧倒的な支持を獲得」としました。プロ・趣味層に対して、ミラーレスを中心とする高付加価値製品を提供するというビジネスモデルを堅持します。レンズの拡充やフラッグシップ機で実現した先進機能を他機種にラインアップ展開をするほか、動画機能の強化、お客様とのタッチポイント拡大といった、ニコンファンを広げる努力を続けます。
事業の安定化と併せて、成長ドライバーとして映像コンテンツビジネスに新規参入しました。3Dやその動画である4Dなどの映像表現、Virtual RealityやMixed Realityの世界に、高品質なボリュメトリックや3Dキャプチャ技術でお応えし、時間・空間を超えて人がつながる社会を映像制作技術で支えていきます。米国マイクロソフト社から国内で唯一のパートナーに認定され、2022年4月には、子会社の映像制作会社ニコンクリエイツの営業を開始しています。映像文化を支えてきたニコンは、これからも新しい映像表現を創造し、映像文化のさらなる発展に貢献していきます。

精機事業

精機事業のありたい姿は、「未来を切り拓くソリューションを顧客に提供し、デジタル社会を支える」です。FPD露光装置では、次世代パネルに対応する技術開発を推進し、高精細化と高生産性の両方を追求することで、安定的な収益を確保します。半導体露光装置は、主要顧客からの需要増加に対応するとともに、積層・三次元化などに取り組むことで、市場の広がりとともに収益を拡大していきます。また、世界で稼働するニコン製の露光装置に対し、ライン移設・改造工事、保守・部品供給などのニーズをしっかり取り込み、サービス収益を着実に伸ばしていく計画です。
精機事業は、「デジタル露光」が成長ドライバーです。現在の露光装置は、フォトマスクという原版をウエハーに転写する仕組みが主流ですが、フォトマスクを使用せずに、デジタル入力したパターンを直接ウエハーに転写する技術の実用化に向けて技術開発を進めています。デジタル露光により、半導体デバイスの試作期間の大幅な短縮や、多品種変量生産が可能になります。また、生産性の向上に加え、マスクコストの削減や回路設計の修正が容易になるなど、多くのメリットが期待されます。「デジタル露光」を通じて、社会に新たな価値を提供していきます。

戦略事業:顧客との新たな価値創造

ヘルスケア事業

ヘルスケア事業のありたい姿は、「イノベーションを通じて、人々のクオリティオブライフの向上を支援」です。生物顕微鏡は、これまでアカデミアで培った技術・技能や知見・経験を、成長著しい製薬・バイオ分野といった民間市場へソリューションとして展開をすることで成長基盤を築きます。網膜画像診断機器は、成長余力の高い欧州や日本・中国をはじめとするアジア地域で数量シェアの拡大を目指すとともに、子会社のOptos Plcとニコンの技術を融合した新たな診断機器の開発にも取り組んでいます。成長ドライバーである細胞受託生産では、再生医療分野で、国内最大級の生産能力を活かし、難病や症例の少ない病気に対する細胞医薬品の受託生産ビジネスを本格化させます。

コンポーネント事業

コンポーネント事業のありたい姿は、「顧客のイノベーションを支えながら、顧客とともに成長」です。光学部品やコンポーネントは、ニコンの全事業の提供価値の源泉です。昨年度から本格的に立ち上がったEUV関連コンポーネントについては、顧客企業の増産要請に応え、生産能力の増強と次世代の開口数の高い、いわゆるHigh NA製品の開発に取り組みます。ニコンの光学部品やコンポーネントへの引き合いも強まっており、半導体関連産業の発展とともに、コンポーネント事業は着実に拡大していくものと期待しています。エンコーダビジネスでは、人と協働するロボットに向け、モジュール化に注力します。ガラスビジネスにおいては、高精度研磨や高品質成膜が求められる大型FPD用フォトマスク基板を中心にビジネスを展開します。

デジタルマニュファクチャリング事業

デジタルマニュファクチャリング事業のありたい姿は、「光応用技術で、ものづくりの世界に革新をもたらす」です。当面は産業機器事業の今の主力ビジネスである工業用顕微鏡やCNC画像測定システムが収益を下支えし、早期成長を見込むレーザーレーダーやX線/CT、インライン計測を中心に売上成長を牽引します。2030年に向けて、社会では宇宙ビジネス拡大、製造業のデジタル化、カーボンニュートラルなどの変化といった環境変化に加え、高出力レーザーやAI、小型・多機能センサーなどの技術革新が想定されることを踏まえ、材料加工とロボットビジョンをデジタルマニュファクチャリング事業の成長ドライバーとして、年率10%を超える売上の成長を目指します。
材料加工、ロボットビジョンについては、露光装置開発等において培った高精度計測や3Dアライメント、高速センシングなどの高度な技術や、さまざまなシステムをインテグレートする強みを活かし、付加加工・除去加工・リブレット加工、ロボットビジョンという独自の提供価値を組み合わせ、完成品・コンポーネント・受託加工サービスなどさまざまな形でお客様に提供し、ものづくりの世界へ革新をもたらします。

中期経営計画の実行を支える基盤戦略

中期経営計画に掲げた事業戦略を実行するには、経営基盤の強化が極めて重要です。
まずサステナビリティ戦略。企業理念である「信頼と創造」の言葉をもとに、事業が環境・社会に与える影響を評価・改善し続けることで社会の期待に「信頼」で応えつつ、事業を通じて、より積極的に環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献する価値を「創造」していきます。「信頼」としては、例えば2050年度のカーボンニュートラルに向け、2025年度までに事業所からの温室効果ガスを46.5%削減するという高い目標を掲げ、取り組んでいます。「創造」としては、事業戦略を通じて脱炭素や資源循環、健康といった領域に貢献する技術・製品・サービスなどを提供していきます。また、従業員一人ひとりが日々の業務を通し、社会課題やサステナビリティについて考える機会を増やし、活動していきます。
次に、人的資本経営です。ありたい姿の実現に向けて、人材は最も重要な経営資源です。必要な人材を獲得し、育成、活躍してもらいます。成長戦略実現のための採用戦略、採用ブランディングを強化するなど、優秀な人材のさらなる獲得に向けてこれまで以上に力を入れていきます。そして、若手・キャリア採用者・グローバル人材・専門人材などを組み合わせ、一人ひとりの生産性を高めたいと考えています。従業員にとっては、プロフェッショナルとしての能力を身に付けることができる、それを発揮することで自己実現ができ、充実感が得られる会社でありたいと考えています。
そして、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。ニコンのDXは、お客様視点と従業員視点の両側から展開していきます。お客様との関係では、個人・法人のお客様に対してデジタルを活用したアカウント営業やデジタル・サービスの展開を図り、お客様の満足度を高めるとともに、収益の拡大を目指します。従業員との関係では、業務プロセスのデジタル化を通じて、従業員がより高度な仕事に取り組める環境をつくるとともに、いつでもどこでもフレキシブルに仕事ができるデジタルインフラを整備します。

「信頼と創造」の基に

メーカーであるニコンにとって、ものづくりは企業活動の源泉です。現場では、複数の生産拠点が互いにアイディアや悩みを話し合う拠点間連携の場を設け、お客様にどのようにして価値を提供するか議論しています。ものづくりで世界に革新をもたらすため、ニコン自身のものづくりの強みを徹底的に磨き、品質をさらに高めていきます。
また、コーポレート・ガバナンスの強化に積極的に取り組んでいます。取締役会の構成については、最適構成の検討を進め、社外取締役の独立性の確保や多様性に配慮しています。また、役員報酬業績連動部分に影響するKPIとしては、ROE等の財務KPIだけでなく、サステナビリティ関連の非財務KPIにも連動する設計としました。コーポレート・ガバナンスの強化は、企業の持続的成長のための基礎であり、引き続き、ガバナンスの透明性と実効性の向上に努めていきます。
ニコンは、2030年に到来する「人と機械が共創する社会」をしっかりと支える企業を目指しています。本業を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献し、従業員には自己実現の機会を提供します。そして、事業の成長と企業価値の向上を通じて、株主を含む全てのステークホルダーの期待にお応えしていく、そうした未来を目指します。今後ともニコンにご期待ください。