CEOメッセージ
2025年8月

中期経営計画の進捗状況
2024年度を振り返りますと、世界的なコスト高やインフレが進行する中、各国で景気が停滞し、多くの事業において市場や競争環境が悪化した1年でした。このような事業環境においても、当社は中期経営計画(2022~2025年度)に沿った事業戦略の強化、経営基盤の整備を推し進めることができました。ステークホルダーの皆様のご協力によるものと心より感謝しています。業績については、売上収益が中期経営計画の目標である7,000億円を2期連続で達成するなど、一定の成果を挙げることができましたが、収益性については課題があると認識しています。
現中期経営計画の最終年度にあたる2025年度は、次期中期経営計画に向けた体制整備の1年と位置付け、収益性改善に向けて、投資選別や運営体制の適性化に向けた自助努力を行い、短期業績の回復と長期成長に向けた投資の両立を進めていきます。

- *最新の収益計画は米国関税影響を除いて算定
- *25年度の最新予想値は2025年5月時点
事業別の進捗状況
映像事業
映像事業は、新製品「Z6III」、「Z50II」の販売が好調に推移し、レンズ交換式デジタルカメラ・交換レンズともに販売数量を伸ばしています。今後もフラッグシップモデル「Z9」の先進機能の他機種展開を進めつつ、交換レンズのラインアップを拡充し、堅調な中高級機市場のコアファンに加え、新規ユーザー、特に若い世代の顧客の拡大に注力する方針です。さらに、2024年4月に完全子会社化した米国RED Digital Cinema, Inc.との統合効果で、今後の市場拡大が予想される業務用動画市場での事業拡大と新たな収益源の獲得を進めていきます。
ヘルスケア事業
ヘルスケア事業は、売上の6割弱を占める「ライフサイエンス」における生物顕微鏡で民間企業向けビジネスの開拓を進めています。日米欧に研究開発拠点を設立し、アプリケーションの拡充と病理診断のDX化を推進しています。「細胞受託生産」では、大手製薬企業から再生医療ベンチャーまで幅広いプロジェクトを支援し、「アイケア」は、独自の超広角眼底カメラで、疾患の早期発見、治療、予防に貢献しています。これらを通じて、安定的な収益の確保に努めます。
精機事業
FPD装置事業では、新型の高精細・高生産性装置の導入を通じ、主要顧客との商談を拡大し、収益性の向上に努めます。半導体装置事業においては、生産及びサポート体制の最適化を図りながら、安定した顧客基盤の拡大に注力しています。また、半導体製造の後工程向けデジタル露光装置や、新プラットフォームArF液浸露光装置の開発を進めていき、中長期的な事業拡大を目指します。
コンポーネント事業
コンポーネント事業は、半導体デバイスの高度化・微細化に伴い、高精度光学コンポーネントやEUV関連コンポーネントなどの採用が引き続き進展しています。また、米国の航空宇宙産業向けにX線/CT検査装置及びサービス販売が順調に拡大しています。今後も完成品・サービス・コンポーネント一体のソリューション提供体制をグローバルに強化し、事業領域の拡大を進めていきます。
デジタルマニュファクチャリング事業
デジタルマニュファクチャリング事業は、子会社のNikon SLM Solutions AG(以下、SLM社)の大型金属3Dプリンターを中心に、主に防衛・航空宇宙市場でビジネスを拡大する方針です。金属3Dプリンティングでは、最大市場である米国に築いた事業拠点をベースに、業界最先端のソリューション・サービスを提供します。今後も、ニコンとSLM社の先進技術を組み合わせることにより、金属3D積層技術の大型精密部品への展開といった新たな技術の確立を加速していきます。
経営基盤強化の進捗状況
ビジネスの拡大を中長期的に支えるためには、経営基盤の一層の強化は極めて重要です。サステナビリティ戦略や人的資本経営の強化を継続するとともに、重点項目であるDXの推進、ものづくりや経営管理の強化に向けて資本を配分し、各種施策を進めていきます。

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サステナビリティ戦略
サステナビリティ推進活動は、外部から高い評価を得ています。マテリアリティ(重点課題)のうち社会・労働の分野では、社会の要請や事業内容の変化に対応し、国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿ったさらなる取り組みに向け、2025年4月に「ニコン人権方針」を改定しました。環境の分野では、温室効果ガスの削減率や再生可能エネルギーの利用率は、中期経営計画を上回って推移しています。また、同年2月に「ニコン環境方針」を改定し、国内外で高まる開示要請へ対応すべく、取り組むべき事項を明確化しました。今後とも、持続可能な社会への貢献とニコンの持続的な成長の双方を目指します。
人的資本経営
人材の「獲得」「育成」「活躍」の3つを柱とし、経営戦略と人材戦略を一体で進めています。人材の「獲得」では、3年連続で600名超の人材を採用しました。経営人材育成プランの拡充も進めています。今後も人材の早期定着・活躍の支援強化や、顧客に伴走しながら新たな価値を提案するソリューションエンジニアの育成に注力します。
顧客・従業員重視のDX
DX推進については、DX人材の獲得と従業員のDXスキル向上に注力するとともに、デジタルマーケティングの強化を進めており、2025年5月には事業を横断した法人向けウェブサイトをリニューアルオープンしました。また、2030年に向けて、グループ全体のDX推進の基盤となる基幹システムの刷新に取り組んでいます。
ものづくり
ニコンの原点である、ものづくりの強化に注力しています。事業環境が大きく変化し、各事業における需要変動が高まるなか、フレキシブルで効率性の高い生産体制を目指し、生産拠点の整備を進めています。特にニコン製品の生命線ともいえるレンズの生産能力増強などを行い、中長期の事業成長を支えます。
経営管理
グローバルガバナンスの強化、グループコンプライアンス体制の整備を進めています。2024年10月には、複数の部門に点在していたガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス機能を集約し、グローバルベース、グループベースの管理体制に再編、強化しました。今後も地域統括会社の2線、3線機能を再整備し、グローバルガバナンスを強化していきます。
さらなる「信頼と創造」を目指して
ニコンは、1917年の創立以来、光の可能性に挑み、お客様の信頼と期待に応えながら、新たな価値を創造してきました。2025年は創立108周年、顕微鏡の発売開始から100周年にあたります。ニコンの顕微鏡は、見えない世界を可視化し、生命現象の解明や先進的な医療現場、そして半導体を代表する最先端の産業分野で幅広く活用されています。
私たちは、お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現するため、お客様が真に求めるものは何かを常に考え、完成品・サービス・コンポーネント一体でのソリューションを提供し、2030年のありたい姿「人と機械が共創する社会の中心企業」を目指してまいります。