CFOメッセージ

2025年8月

財務規律と資本効率を重視し、収益性の改善、成長事業への選別投資、安定的な株主還元を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます 執行役員 CFO、財務・経理本部長 松本武史

CFO就任に際して

皆様、初めまして。2025年4月に、社長德成の後任としてCFOに就任しました松本武史です。私はこれまで日本と米国の金融機関にて、主に日本の大手テクノロジー企業を顧客としたM&A戦略に関するアドバイザリー業務、資金調達やIRアレンジなどの実務を通算20年以上にわたって担当し、主要顧客の1社であったニコンに2021年5月に入社しました。これまで財務経理部門の責任者を務めてきましたが、今後は、CFOとしての責務も果たしていくこととなります。前CFOが積極的に推進してきた株主・投資家の皆様との対話、持続的成長を支える規律ある財務運営、企業価値向上に向けた取り組みを加速していきます。
足元では、映像事業の販売は順調に推移しているものの、市場の回復遅れによる半導体関連事業の低迷や米国における関税政策等が全社業績に大きく影響を与えています。
収益性改善に全力で取り組むことは当然ながら、2030年のありたい姿「人と機械が共創する社会の中心企業」の実現、またその先の長期的なニコンの企業価値向上に向けては、注力分野をより明確化し、優先順位を付けた上での継続的な投資も必要と考えています。損益のみでなく、バランスシート、キャッシュ・フローに視点を置いた事業運営に転換し、財務健全性を維持しながら、限られた資本を適切に効率よく配分した企業経営を行うことで、ニコンの技術力を生かした持続的な成長と企業価値向上を支えていきます。

2024年度の振り返り

中期経営計画3年目にあたる2024年度の業績は、売上収益7,152億円(前年比19億円減)、営業利益24億円(同373億円減)、親会社の所有者に帰属する当期利益61億円(同264億円減)の減収減益、ROEは0.9%となりました。
売上収益については、映像事業やヘルスケア事業、デジタルマニュファクチャリング事業では販売が好調に推移し、増収となりました。一方、精機事業やコンポーネント事業の半導体関連ビジネスの販売が減少し、全社としては前年をやや下回りました。
営業利益は、精機事業の半導体装置事業において、将来計画を見直した結果、固定資産減損損失や棚卸資産評価損、サービス拠点最適化のための構造改革費用を合わせて141億円計上するなど、全社で272億円の一時費用が計上されたことで大幅な減益となりました。

2025年度の見通し(2025年5月公表内容)

中期経営計画の最終年度となる2025年度の業績予想は、売上収益は7,100億円、営業利益は360億円(営業利益率5.1%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は300億円としました。
売上収益は、コンポーネント事業やデジタルマニュファクチャリング事業において増収が見込まれるものの、半導体装置事業の主力製品であるArF露光装置の販売台数やサービス収入の減少のほか、前年実績比で円高の為替前提もあり、全社として前年並みとなる見込みです。
一方、営業利益については、一部事業の増収に加え、前年の一時費用が剥落するため増益を見込みます。さらに、遊休資産の売却や研究開発費削減等の自助努力に取り組むほか、2024年度に実施した構造改革等の効果発現が期待されます。これらにより、前年比336億円増の大幅増益を計画しています。
なお、ROEについては4.7%となる見通しです。
2024年度に比べ収益は改善しますが、中期経営計画の目標としていた売上収益7,000億円、営業利益率10%以上(営業利益700億円以上)、ROE8%以上に対しては、売上収益以外は大きく未達となる見通しであり、収益性改善が喫緊の課題であると強く認識しています。固定費の削減やバランスシート効率化を進め、業績回復に向けて全社を挙げて取り組んでいきます。
上記業績予想は米国政府による相互関税の影響を織り込んでいません。5月時点では営業利益への影響額をマイナス100億円程度と見込んでいますが、今後アップデートしていきます。

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2030年に向けては、精機事業が次世代露光装置と顧客の多様化で収益を伸ばす一方、映像事業は競争力のある業務用動画機の投入と若年層を含む新規顧客獲得で安定利益の確保を目指す方針です。また営業利益率の比較的高いヘルスケア事業、コンポーネント事業で着実に収益を拡大し、デジタルマニュファクチャリング事業は金属付加加工で業界全体の伸びを上回る売上成長と赤字幅の早期圧縮を目指します。

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資本配分―R&D投資は投資先を選別し、集中投資へ

中期経営計画で掲げた成長を実現するための資本配分については、研究開発型企業として配分可能原資の8割以上を成長投資に振り向けます。
戦略投資は、SLM Solutions Group AG(現Nikon SLM Solutions AG)、RED Digital Cinema, Inc.社(以下、RED社)の大型M&Aで一区切りとし、今後は、RED社とニコンの統合効果による業務用動画機、精機事業における次世代露光装置、デジタルマニュファクチャリング事業における金属付加加工の3領域を注力分野に定め、重点的に資金投下する方針です。

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株主還元については、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として、政策保有株式売却等のバランスシート効率化による資金を活用し、2024年度に300億円の自己株式取得を実施しました。1株当たり配当は当初2025年度に向け年間60円配当への漸増を計画していましたが、2024年度及び2025年度は年間50円に据え置くこととしました。これらにより中期経営計画中の総還元性向は40%以上とする目標に対し、111.3%となる見通しです。

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当社は、2024年度中に16年ぶりのネットデット、すなわち有利子負債が現金等を上回る財政状況となりました。今後も財務健全性を維持しながら株主価値向上を目指すためには、これまで以上に財務規律と資本効率を重視した企業経営が重要になると認識しています。バランスシートやキャッシュ・フローをしっかりと管理する体制を全社に浸透させ、持続的なニコンの企業価値向上に向けて、収益性の改善、成長事業への選別投資、安定的な株主還元に取り組んでいきます。
当社を取り巻くすべてのステークホルダーの皆様のご理解、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。