2026年8月
皆様、はじめまして。2024年4月にニコンに入社し、経営管理本部長を務めております葛西洋一です。2025年4月からはCROとして、ニコングループ全体のリスクマネジメントとガバナンスの強化、ならびにサステナビリティ戦略の立案・実行を担当しています。
私はこれまで、金融機関において約30年にわたり、投資銀行業務や事業戦略立案、新規事業投資に携わり、企業の意思決定や資源配分の現場に関わってきました。そうした経験から、企業価値は成長機会の追求だけでなく、不確実性とどう向き合うかによって大きく左右されることを実感しています。
ニコンにおいては、リスクマネジメントを「守り」に閉じることなく、経営の意思決定を支える基盤として進化させていきたいと考えています。
ニコンは、光の技術を核に多様な事業を展開し、社会に価値を提供してきました。現在は中期経営計画のもと、事業ポートフォリオの再定義と経営資源の選択と集中を進めています。
こうした経営において重要なことは、投資判断そのものではなく、その前提となるリスクと不確実性をどこまで織り込むかにあります。
事業成長に向けた挑戦には常にリスクが伴いますが、それを回避することより、どの前提に基づいて意思決定を行い、どの不確実性を引き受けるのかを明確にすることが重要です。
当社では、事業部自らが前提条件とリスクを整理し、戦略と一体で議論するプロセスを進めています。リスクを単なる制約ではなく、計画を成立させる前提として捉えることで、意思決定の質を高めています。
AIの進展や地政学的変化、サプライチェーン再編など、不確実性は一層高まっています。このような環境において、リスクは脅威であると同時に、新たな価値創出の起点でもあります。
当社では、リスクを「脅威」と「機会」の両面から捉え、中長期の構造変化を踏まえた識別と議論を進めています。リスクを通じて将来の前提条件を問い直し、経営の対話に組み込むことが、持続的成長につながると考えています。
リスクマネジメントは管理にとどまらず、意思決定そのものを形づくる営みです。CROとして、変化の兆しを捉え、判断の拠り所となる視点を提供していきます。
当社は、サステナビリティを経営の中核に据え、事業を通じた社会価値の創造を起点に持続的成長を目指しています。
中期経営計画では4つの貢献領域を定め、顧客やパートナーとの共創を通じた価値創出を進めています。
この共創の広がりは新たな機会である一方、サプライチェーン、情報、品質に関するリスクの複雑化も伴います。CROとしては、これらのリスクを適切に可視化し、信頼向上を通じて価値創造が持続的に機能する仕組みを整備することが重要であると考えています。
また、人材と組織の力を最大化するとともに、価値創造を支えるガバナンスとリスクマネジメントを一体で推進することで、信頼に支えられた事業基盤を築き、持続可能な社会の一員としての責任を果たしていきます。
持続的成長には、それを支える強固な経営基盤が不可欠です。
当社は、人的資本、ものづくり、DX、経営管理、サステナビリティといった基盤領域の強化を進めています。
重要なことは、「統制の効いたガバナンス」と「変化に対応するレジリエンス」の両立です。リスクが部門や地域を越えて連動する中、情報の可視化と迅速な意思決定を可能とする体制整備を進めています。
私はCISO(Chief Information Security Officer)を兼ね、情報セキュリティおよびサイバーリスク管理を統括しています。これらは単なる管理対象ではなく、事業継続性と競争力を支える基盤です。光でつながる価値を安全かつ持続的に社会へ届けるためにも、統制強化と回復力向上に取り組んでいきます。
さらに、環境・人権や情報開示への対応は、社会からの信頼の礎です。これらをリスクマネジメントと一体で推進することで、企業価値の毀損を防ぎ、持続的成長を支える基盤を強化していきます。
リスクマネジメントは、損失を防ぐためだけのものではなく、企業の意思決定と資源配分を支える源流です。
ニコンが変化の中で挑戦を続け、社会から信頼される企業であり続けるとともに、持続可能な形で企業価値を高めていくために、CROとしてリスクマネジメントと情報セキュリティの高度化を通じ、その基盤を着実に深化させていきます。
不確実性を前提とする時代において、持続可能性と成長を両立させる経営を支えることこそが、リスクマネジメントに求められる役割であると考えています。
ステークホルダーの皆様には、引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。